重厚長大からライトノベルへ

主にライトノベルの感想とそれに関連するネタを書きます。

感想「異世界居酒屋「のぶ」」(蝉川夏哉/宝島社文庫)☆☆☆☆

異世界居酒屋「のぶ」 (宝島社文庫)

異世界居酒屋「のぶ」 (宝島社文庫)

居酒屋「のぶ」の正面入口は、なぜか異世界に繋がっている。中世ヨーロッパのような世界のそこに住む衛兵、貴族、聖職者、ギルドマスターなどが、今日ものぶの料理を味わいにやってくる。新感覚の飲みもの“トリアエズナマ”に始まり様々な未知の料理を味わいに。

この本は、宝島社から単行本として出版している同名の小説に短編を加えて文庫化したものだ。
・大きな挿絵でみたい・カラーイラストがみたい・続刊を早く読みたい→単行本
・追加される短編を読みたい・小さいほうがいい・安価がいい→文庫本
で好きな方を買うと良い。



人気な「小説家になろう」からの書籍化作品のひとつ。異世界からみた地球の料理を楽しめる。
異世界ゆえの問題もこの居酒屋の料理をたべるとあまりの美味しさに解決!
おいしそうな食べ物の描写も面白かったし、ワガママな貴族が訪れたり、税を搾り取ろうとしてきたりなど、ハプニングなどで料理モノの小説として単調ではなくよかった。

感想「[映]アムリタ」(野﨑まど/メディアワークス文庫)☆☆☆☆

芸大生の二見遭一は自主映画制作に誘われた。その映画監督は天才と言われる最原最早がするというものだった。二見は最原の絵コンテを見た瞬間に五六時間もぶっ続けで読んでしまうほど引き込まれてしまった。そして、男優として参加して映画を撮影していくのだが、もともとは別の男優がいて、実はその人は交通事故で死んだという……。


[ネタバレ注意]








メディアワークス文庫の新人賞一弾。野﨑まどのデビュー作! あまりにも面白く、この一冊は一瞬で読み切ってしまった。
最初は、天才映画化の元で映画を作っていく、そしてそれは見た人が涙をながすほどの出来だった。しかし、最原の以前作った映画は見た人を強制的に泣かせる一種のドラッグというものだった。ここからはページを捲る手が止まらなかった。
主人公は彼女の家に放置された絵コンテ、映画「アムリタ」から彼女の真相を読み解き、自分が犠牲になることで他人に被害が及ばないようにする。しかし、このあとのどんでん返しには驚かされた。物語の最初から主人公は主人公でなかったのか、死んだ男優は本当に存在したのか。そこの謎を解明してほしいような、このまま隠されていてくれたほうが想像できていいのか、そこも悩んでしまうような驚きの作品だった。

感想「螺旋時空のラビリンス」(辻村七子/集英社オレンジ文庫)☆☆☆☆

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

二〇九九年、気候変動・地殻変動・食糧不足・宗教戦争放射能汚染、さまざまな問題の中で暮らす十九億八千万人のひとびとなんて気にもせずに、世界の上位層の二千万人はシェルターの中で無農薬野菜を食べ、娼婦を見繕いゲリラを私兵に雇いながらヌクヌクと暮らしていた。
この世の中で大幅に地位を向上させた職業は物理学者、歴史学者、そして……泥棒だった。こんな世の中で人らしくするために文化芸術の振興だとエライ人たちは考え、タイムマシンで美術館や歴史上の建物が戦争で崩壊する前にワープして芸術品を盗み出すということを実行していた。
孤児だった主人公はそんな芸術品を回収する会社に拾われ、泥棒のエージェントとして育てられた。ある日、いつもどおり会社に招集され、そのときに与えられた任務は一八四三年のパリに「冬のつぼみ」という宝飾品を盗み出すこと。しかし、その宝飾品は主人公の会社の同僚――同じように泥棒のエージェントとして育てられた同期の女性がその時代に持ち逃げしたものだった。


[ネタバレ注意]





2014年度ロマン大賞受賞の本作、オレンジ文庫の新人第一弾でまさかこんな本がでてくるとは……。
最初は彼女とであうが宝石を返してもらえず宝石のありかを探す主人公だが、一度現在に戻ろうとするもなぜかタイムスリップ初日に戻ってしまう。そこから怒涛の展開で、何回もループし、彼女が病気にかかりながら現在に帰らない理由などを探っていく。
最終的なループの秘密、彼女が帰らない秘密、同僚の秘密などの発見がすごく作り込まれていた。
個人的にハッピーエンドが好きなので、終わり方も満足! 良策だった。

感想「無欲の聖女 1」(中村颯希/ヒーロー文庫)☆☆☆☆

無欲の聖女 1 (ヒーロー文庫)

無欲の聖女 1 (ヒーロー文庫)

教会ですごす金に目のない孤児の主人公と、学院に呼び出されたお嬢様が入れ替わる?! 勘違いコメディ!!

帝国中の十五歳の魔力を持つもの(基本は王族だが商人などの中にも存在する)は、秋――帝国学院の入学式前夜に呼び出される。こうすることで帝国は優秀な人材を囲い込んできた。
孤児院ですごす少年の主人公は、街角で少女がしゃがみこんでいるのを見つける、屋根の石が少女の頭に落ちそうになっているのを助けようとして石に当たって気絶した主人公は、なぜか少女と入れ替わってた?!
少女は昔王家から亡命した姫の娘であったが、学院に呼び出されるのが嫌だった。そこで入れ替わり魔法を使おうとしていたところ偶然、主人公がその対象となってしまったのだ。
美しいが、その出生から学院でいじめられる主人公だが、貧乏であったがゆえすこしでも儲けにつながるものは大事にする性格ゆえ、いじめのつもりで送られる変なものもすべて好意だと解釈してしまう。
周りから見ると、嫌がらせを受けても嫌な顔せず逆に感謝するような主人公を聖女と讃えだす。

「小説家になろう」連載の小説だが、いじめる側がどんなにやっても主人公が好意的に感じる様や、
それで、逆にいじめっ子側が罪悪感をえるようになり、どんどん懐柔されていく様子が見ていて面白い。
勘違いコメディとしてとても楽しかった。ギャグ作品が読みたい人にオススメだ。

感想「ナナヲ♥チートイツ」(森橋ビンゴ/メガミ文庫)☆☆☆☆

ナナヲ・チートイツ (メガミ文庫)

ナナヲ・チートイツ (メガミ文庫)

麻雀ラノベ
ライトノベルの中でもこれをモチーフにしたのは全然見たことがない、というものの代表である麻雀がモチーフにされている。
麻雀のルールを知っている人ならモチロン楽しむことができるし、ルールを知らない人も読んでいて楽しめます。さすが森橋ビンゴ先生!
一応、本の中でルールの解説もあるし、巻末に役の一覧があるのでこれでルールを覚えるという使い方も可能。

昔は父親と2人で代打ちとしてコンビで活動していた主人公だが、今は父に借金の代わりとして売られヤクザの女頭のもとで過ごす主人公。
当初は麻雀の才を買われていたが、父親に売られる原因となった試合以来、運から見放され現在はもっぱら性奴隷としての役割のみを果たしている。
ある日、代打ちをしていたある女性が娘に借金を押し付けて失踪したという話を聞く……。

主人公をめぐる環境は暗い。そして、まわりの人の境遇も暗いものもあるが、これはれっきとしたスポコンものだ。
普通のスポコンと違い、やってるのは裏世界の賭けマージャン。そして、それをやる理由も黒い理由があるだけだ。
仲間(ヒロイン)と打ち解け、マイナスな気持ちで運に見放されていた主人公が気持ちも変化し強敵に立ち向かう。そういうのが好きな人はぜひ読んでほしい。

感想「君の名は。 Another Side:Earthbound」(加納新太/角川スニーカー文庫)☆☆☆☆☆

大人気映画「君の名は。」の公式外伝小説。
映画内ではあかされなかったキャラクターの内面が描かれる。

1章では、入れ替わりシーンの保管。
2章では、ミツハ達の仲良しグループの一員で、田舎の土建屋の社長の一人息子、カツヒコの話。
3章では、ミツハの妹と神社に代々伝わる伝説についての話。
4章では、ミツハの父親と母親の話。なぜ父親は町長になったのか、心境の変化を描く。

個人的に最も好きだったのが、1章だ。
この映画は恋愛要素もありギャグ要素もありセカイ系、家族関係の要素もある。人によってどこを重点的に見るかは違うが、私は恋愛要素やギャグといった部分が特に好きだったので、そこの話を書いてくれて嬉しかった。
さらに言えば、あの日町のみんなが移動したあと彗星を見てミツハが問い詰められるところも読みたかったが……。

感想「小説 君の名は。」(新海誠/角川文庫)☆☆☆

2016年日本中に名を轟かせた映画「君の名は。」その小説版だ。

この小説版は(あえてノベライズとは言わない)映画「君の名は。」をほぼ忠実に再現したものだ。
だから映画を見ていない人にもおすすめだ(だけど、ぜひ映像でも見てほしい。映像の方がさらに楽しめるしおすすめだ)。
映画を見た人は、映画をみたときのあの感情を何度も思い起こさせてくれるこの本は買ってもいいだろう。


冒頭でノベライズと言わなかったのは、この小説版は映画を文章に起こしたのとも違うし、小説を読んだからと言って映画をみるのとはまた違った感想を持つからだ。
映画は時間が自動的にすすんでくれるので基本的に見る人は受動的だ。だが、小説版は自分の手で読むスピードを変えられるので、気になるところを時間をかけて読んだり、ページを戻ったりできる。
小説だけしか読んでない人はぜひ映画を見るべきだし、映画しか見てない人は小説も読んでみてほしい

個人的には、映画→小説がおすすめ。


映画の感想
東京の男子高生と、田舎の女子高生が入れ替わる話。入れ替わりを映像表現したときのコミカルなシーンが新鮮だった(入れ替わり漫画や小説は読むことがあっても普段映像で見ないから)。
コミカルなだけでなく、ぐいぐい引っ張るような展開もありとてもおもしろかった。