重厚長大からライトノベルへ

主にライトノベルの感想とそれに関連するネタを書きます。

感想「螺旋時空のラビリンス」(辻村七子/集英社オレンジ文庫)☆☆☆☆

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

二〇九九年、気候変動・地殻変動・食糧不足・宗教戦争放射能汚染、さまざまな問題の中で暮らす十九億八千万人のひとびとなんて気にもせずに、世界の上位層の二千万人はシェルターの中で無農薬野菜を食べ、娼婦を見繕いゲリラを私兵に雇いながらヌクヌクと暮らしていた。
この世の中で大幅に地位を向上させた職業は物理学者、歴史学者、そして……泥棒だった。こんな世の中で人らしくするために文化芸術の振興だとエライ人たちは考え、タイムマシンで美術館や歴史上の建物が戦争で崩壊する前にワープして芸術品を盗み出すということを実行していた。
孤児だった主人公はそんな芸術品を回収する会社に拾われ、泥棒のエージェントとして育てられた。ある日、いつもどおり会社に招集され、そのときに与えられた任務は一八四三年のパリに「冬のつぼみ」という宝飾品を盗み出すこと。しかし、その宝飾品は主人公の会社の同僚――同じように泥棒のエージェントとして育てられた同期の女性がその時代に持ち逃げしたものだった。


[ネタバレ注意]





2014年度ロマン大賞受賞の本作、オレンジ文庫の新人第一弾でまさかこんな本がでてくるとは……。
最初は彼女とであうが宝石を返してもらえず宝石のありかを探す主人公だが、一度現在に戻ろうとするもなぜかタイムスリップ初日に戻ってしまう。そこから怒涛の展開で、何回もループし、彼女が病気にかかりながら現在に帰らない理由などを探っていく。
最終的なループの秘密、彼女が帰らない秘密、同僚の秘密などの発見がすごく作り込まれていた。
個人的にハッピーエンドが好きなので、終わり方も満足! 良策だった。